【大学生必見】言語化能力を向上させる5つの実践テクニック
- 公開日
- 2025/10/17
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多くの大学生が、頭の中の考えをうまく言葉にできなかったり、面接などで思いを伝えきれなかったりといった悩みを抱えています。自分の考えを伝える場面は多岐にわたりますが、この「言語化」の壁にぶつかり、自身の可能性を十分に発揮できないと感じる学生も少なくありません。
しかし、言語化能力はトレーニングによって確実に向上するスキルです。この記事では、言語化の重要性から、すぐに実践できる具体的な5つのテクニックを解説します。
この記事を通じて、自分の考えを整理し、言葉で表現することへの自信を深め、学業、就職活動、そして将来の人間関係を豊かにするためのコミュニケーションスキル向上への第一歩を踏み出せるでしょう。
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目次
1.「言語化が苦手」とは?大学生が抱えがちな悩み
大学生の多くが直面する「言語化の壁」は、頭の中の考えや感情を、相手に分かりやすく言葉にする力が足りないことから生じます。この言語化の力には、ただ話すことだけでなく、物事を論理的に整理し、具体的に表現する能力も含まれています。
このセクションでは、言語化のよくある悩みとその原因を見ていきましょう。
1-1 自分の考えや感情をうまく言葉にできない
「あの映画、すごく面白かった!」
だけで会話が途切れるように、自分の考えや感情を具体的な言葉で表現できない経験はありませんか?授業のディスカッションで漠然とした違和感を覚えても、それを相手に伝えられない。このもどかしさは、思考の整理不足や語彙力の不足が原因です。伝えたいことはあるのに、抽象的な表現しかできない、言葉に詰まってしまうといった内面的な葛藤は、多くの大学生が抱える共通の悩みです。
1-2 面接やグループディスカッションでうまく意見を述べられない
就職活動の面接やグループディスカッションで、自分の考えを言葉にできず、頭が真っ白になる経験はありませんか?緊張により準備した自己PRを伝えきれなかったり、グループディスカッションで意見を整理する間もなく発言の機会を逃したり、要点が不明瞭で相手に伝わらなかったりする悩みは、多くの大学生が抱えています。
どれほど素晴らしい経験や優れたアイデアを持っていても、それを言葉で的確に伝えられなければ、面接官や採用担当者に響かせることはできません。就職活動という人生の重要な局面において、言語化能力は単なるスキルの域を超え、皆さんの将来を左右する可能性すら秘めているのです。
下記講座では、グループディスカッションで、面接官に見られている力や、実際の進め方や考え方を具体例を交えて解説しています。ぜひ、ご覧ください。
1-3 自己分析をしても、自分のことがよくわからない
言語化能力は、自己理解を深める上で不可欠なスキルであり、就職活動の自己分析においても重要です。自分の強みや志望理由を明確に言葉にできないのは、思考が整理されず、客観視できていないためです。
例えば、「協調性がある」という抽象的な感覚も、具体的なエピソードを伴わなければ説得力を持ちませんし、興味のある業界の魅力も言語化できなければ、深く掘り下げて理解することは困難です。「自分の考えがまとまらない」と感じるのは、まさに言葉にする力が不足している状態です。感情や思考を言葉にすることで、初めて客観的に自分を見つめ直し、深く考えることが可能になります。
このように、言葉を用いて自分自身と向き合い、本当の気持ちや価値観を明確にすることは、将来の進路や人生設計を考える上で極めて重要です。
自己分析の重要性については、以下の講座でも解説しています。ぜひご覧ください。
2.なぜ大学生に言語化能力が必要なのか?
これまでの内容で、言語化が苦手だと感じる皆さんの具体的な悩みを見てきましたが、ここからは、なぜ大学生にとって言語化能力がそれほどまでに大切なのか、その本質的な理由をさらに詳しく掘り下げていきましょう。言語化能力は、自分の考えをただ話せるようになるだけではありません。就職活動を成功させたり、大学での学びをより深めたり、充実した人間関係を築いたりするなど、皆さんの大学生活や将来を豊かにする強力なツールとなるのです。
このあと紹介するメリットを通じて、言語化力を高める意欲につながれば幸いです。
2-1 就職活動で自己PRや志望動機を効果的に伝えられる
就職活動において、言語化能力は皆さんの将来を大きく左右する、非常に重要なスキルの一つです。面接で「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」や自己PRを伝える際、ただ経験した事実を並べるだけでは、面接官の心に響くことは難しいでしょう。「カフェのアルバイトを3年間続けました」という一言だけでは、皆さんの個性やそこでの成長は十分に伝わりません。
大切なのは、その経験から「何を学び」、どのような課題に「直面し」、それをどう「乗り越え」、結果として「どのような強み」を得たのかを、筋道を立てて言葉にすることです。例えば、「3年間続けたカフェのアルバイトで、お客様のニーズを先読みし、注文前に好みのアレンジを提案した結果、顧客満足度を20%向上させることができました。この経験を通じて、相手の状況を深く観察し、課題解決へと導く提案力と実行力を身につけました」と具体的に語ることで、説得力は大きく高まります。このように、自身の行動と思考のプロセスを明確に言語化できる学生は、「自分の頭で考え、行動できる人材」として高く評価されるでしょう。
2-2 レポート作成やプレゼンテーションの質が向上する
大学生活を送る上で、レポート作成や卒業論文、ゼミでのプレゼンテーションといった学術活動は欠かせません。これらの活動の質を高める上で、言語化能力は欠かせない基本的な力です。例えば、複雑な先行研究を正確に理解し、そこから自分の意見を導き出し、さらにその意見を裏付ける根拠を論理的に組み立てるプロセスは、まさに言語化能力が支えていると言えるでしょう。
また、ゼミや授業でのプレゼンテーションでは、どれほど素晴らしい研究内容であっても、聞き手が理解できなければその価値は伝わりません。聞き手の知識レベルや関心事を意識して情報を整理し、分かりやすい言葉で伝える力は、皆さんの発表がどれほど高く評価されるかに直接つながります。構成が明確で、専門用語も適切に解説しながら話せる人は、教授や同級生からの信頼も得やすく、「授業やゼミでの発表を自信を持って行えるようになる」という目標達成にもつながるでしょう。
レポート作成・プレゼンのコツについては下記講座でも解説しています。
2-3 頭の中の「モヤモヤ」を整理することができる
大学生が抱える漠然とした不安や違和感を言葉にすることは、思考を整理し、具体的な行動を促す上で非常に重要です。
例えば、就職活動を控えた学生が「将来が漠然と不安」を感じる時、それを「本当にやりたいことが不明確」「面接でうまく話せる自信がない」と具体化することで、自己分析や模擬面接といった対策へ繋がります。
また、低学年の学生がグループワークで「何か違和感がある」と感じた際、それを「〇〇のデータから、この計画には××のリスクが考えられる」と具体的に言語化することで、建設的な意見としてチームに貢献できます。
このように、抽象的な感覚を言葉にする練習は、思考をクリアにし、問題解決や自己理解を深め、自信を持って行動するための基盤となります。
2-4 オンラインコミュニケーション時代における伝達の重要性
現代の大学生にとって、チャットやメール、SNS、オンラインミーティングなど、テキストや画面越しのやり取りが日常に深く根付いており、言語化能力の重要性はかつてないほど高まっています。対面コミュニケーションとは異なり、オンライン環境では表情や声のトーンといった非言語情報が抜け落ちるため、言葉そのものの正確さ、明確さ、そして相手への配慮が極めて重要となります。曖昧な表現は誤解や冷たい印象を与えかねないため、意図を正確に伝え、建設的なコミュニケーションを行うには、短い文面でも要点を押さえ、論理的で配慮のある言語化能力が、これまで以上に重要な要素となります。明確な言語表現力は、学業、友人関係、そして将来の仕事において、信頼性を高め、コミュニケーションを成功に導くための必須スキルと言えるでしょう。
オンラインコミュニケーションのコツについては下記講座でも解説しています。
3.言語化が苦手でも伝える力が身につく!5つの実践テクニック
言語化能力は、単に「話すこと」だけを指すものではありません。頭の中で考えていることや感じていることを、相手が理解しやすい言葉に変換し、的確に伝える総合的な力のことです。この能力は「観察力」「思考力」「語彙力」「要約力」という4つの要素で構成されており、これらをバランスよく鍛えることで、誰でも効果的に自分の思いを伝えられるようになります。
これからご紹介する5つの実践テクニックは、これらの基礎能力を日々の生活の中で無理なく、かつ確実に向上させるためのトレーニングです。特別な才能は必要なく、少しの意識と継続で着実に身につけられるものばかりですので、「これなら自分にもできる」と前向きな気持ちで取り組んでみてください。
テクニック1:五感で感じたことを言葉にする
「なんだか感動した」「すごく面白かった」といった抽象的な感想で終わってしまい、その感動や面白さを具体的に伝えられない経験はありませんか。テクニックの1つ目は、この漠然とした感覚を、五感を使って詳細に言葉にする「五感を使った実況中継」トレーニングです。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を意識して物事を描写する練習をすることで、観察力が鍛えられ、より具体的で豊かな表現が可能になります。
例えば、初めて足を踏み入れた大学図書館の閲覧室の雰囲気を単に「静かだった」で済ませるのではなく、「一歩足を踏み入れると、まず湿度とわずかなインクの匂いが混じった独特の空気が鼻をくすぐり、視界には天井まで届く書架に並んだ膨大な本の背表紙が圧倒的に広がる。耳を澄ませば、ページをめくる微かな音、キーボードを打つ小さな音、そして遠くから聞こえる時計の針の音だけが、まるで時間をゆっくりと刻むように響いているのが感じられる」のように、五感を総動員して描写してみるのです。最初は難しく感じるかもしれませんが、意識的に続けることで、日々の出来事や感情をより詳細に捉え、表現できるようになります。
このトレーニングは、特別な準備や場所を必要としません。通学中の景色、カフェで飲むコーヒーの香り、友人と交わす会話の声のトーンなど、日常のあらゆる場面で実践できます。五感を意識して言葉にすることで、普段見過ごしているような細かな情報に気づくようになり、それが観察力の向上、ひいては言語化能力全体の底上げに繋がります。
テクニック2:思考をフレームワークで整理する
自分の考えを話しているうちに、何が言いたいのか分からなくなったり、話が脱線してしまったりすることはありませんか。これは、頭の中の思考が整理されていないために起こりがちです。思考が漠然としたまま言葉にしようとすると、どうしても冗長になったり、要点がぼやけてしまったりします。そこで有効なのが、思考を特定の型に当てはめて整理する「フレームワーク思考」です。
フレームワークを活用することで、複雑に絡み合った情報を構造的に捉え、論理的な順序で考える癖がつきます。これは、プレゼンテーションやディスカッションの場で、自身の意見を分かりやすく、説得力を持って伝える上で非常に強力な武器となります。ここでは、特にビジネスシーンで広く活用されている「PREP法」を具体的な例を交えながらご紹介します。
■ 結論から話すPREP法を意識する
思考を整理し、論理的に伝えるための具体的なフレームワークとして、PREP法は非常に有効です。PREP法とは、Point(結論)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(結論を繰り返す)の頭文字を取ったもので、この順番で話すことで、聞き手はあなたの意見をスムーズに理解しやすくなります。
例えば、就職活動の面接で「あなたの強みは何ですか?」と聞かれたとしましょう。PREP法を使わない場合、「私は大学時代、サークルでイベントの企画をして、色々な人と協力して、それで…」といったように、具体的な話から入ってしまい、結局何が言いたいのか分かりにくくなることがあります。しかし、PREP法を活用すると、以下のように回答できます。
「私の強みは、困難な状況でも諦めずに課題を解決する実行力です。(Point:結論)なぜなら、大学の文化祭で企画した模擬店の運営で、予想外のトラブルが発生した際に、状況を冷静に分析し、具体的な解決策を立案・実行して成功に導いた経験があるからです。(Reason:理由)具体的には、当日の食材が大幅に不足するという事態に直面しましたが、私はすぐに近隣のスーパーを複数回り、代替食材を確保。同時に、メニューの一部変更を提案し、他のメンバーと協力して短時間で対応しました。結果的に、売上目標を達成し、来場者からも高い評価を得ることができました。(Example:具体例)このように、私は困難な状況に直面しても、諦めずに具体的な行動を起こし、解決に導く実行力を持っています。この強みは、貴社が求める『主体的に行動し、課題を乗り越える人材』に合致すると考えております。(Point:結論を繰り返す)」このように、PREP法を用いることで、話の要点が明確になり、論理的で説得力のあるコミュニケーションが可能になります。
他にも、論理的思考方法をご紹介しています。言語だけでなく、問題解決スキルの向上に役立つ論理的思考法を学んでみてください。
テクニック3:言葉の引き出しを増やす
自分の感情や思考を言葉にしようとしたとき、「しっくりくる言葉が見つからない」「なんだか陳腐な表現になってしまう」と感じることはありませんか。これは、言葉の引き出し、すなわち語彙力が不足していることが原因かもしれません。
語彙力は、思考の解像度を上げるための強力な道具です。豊富な語彙を持つことで、自分の内面で起きている複雑な感情や、漠然としたアイデアを、より的確で繊細な言葉で表現できるようになります。言葉の引き出しを増やすことは、表現の幅を広げ、より豊かなコミュニケーションへと繋がる重要なステップです。
■ 普段読まないジャンルの本や記事に触れる
語彙力を効果的に増やすには、普段あまり読まないジャンルの本や記事を意識的に読むことが大切です。私たちは、どうしても自分の興味のある分野や専門分野に偏りがちですが、それだけでは新しい言葉との出会いが限られてしまいます。例えば、理系の学生が歴史小説を読んでみたり、文系の学生が最新の科学ニュースやビジネス書に目を通してみたりと、意識的に自分の専門領域や関心の範囲を広げてみることが重要です。
新しいジャンルのテキストを読むことで、これまで知らなかった専門用語や、日常ではあまり使われない表現に多く触れることができます。ただ読むだけでなく、そこで見つけた言葉の意味を調べてノートに書き留める習慣をつけると良いでしょう。言葉の意味を深く理解することは、その言葉の持つニュアンスや背景までを掴むことにつながります。
さらに効果的なのは、新しく覚えた言葉を実際に使ってみることです。日記やレポート、友人との会話などで積極的に使ってみることで、その言葉が自分の中に定着し、自然と表現の幅が広がっていきます。このような積み重ねが、あなたの表現力をより豊かにし、思考を深め、広げる力になるはずです。
テクニック4:短い文章で要約する練習をする
長い話のどこがポイントなのか分からなくなったり、重要な情報を見落としてしまったりすることはありませんか。これは、情報の本質を捉え、簡潔にまとめる「要約力」が不足しているためかもしれません。
要約力は、物事の構造を理解し、最も伝えたい核となる部分を見抜く能力を鍛える上で非常に重要です。この能力を身につけることは、大学でのレポート作成やゼミでの発表はもちろんのこと、将来的にビジネスシーンでの会議の議事録作成や報告書の作成、さらには日常会話で相手に分かりやすく説明する際にも大いに役立ちます。情報が溢れる現代において、要約力は必須のスキルと言えるでしょう。
「要約力」のトレーニングについては、下記の講座でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
■ SNSの投稿を活用して140字でまとめる
要約力を高めるには、SNS、特にX(旧Twitter)の140字という文字数制限を活用した投稿が非常に効果的なトレーニングとなります。日々のニュース記事や映画・ドラマの感想、あるいはその日に考えたことなどを、この文字数でまとめる習慣をつけましょう。
140字という制約は、不要な情報を徹底的に削ぎ落とし、最も伝えたい核心に焦点を当てる優れた訓練になります。 例えば、興味深いニュース記事を読んだら、「この記事の主題は何か」「最も重要なポイントはどこか」「なぜそれが重要なのか」と自分に問いかけ、それを短い言葉で要約します。このプロセスを通じて、情報の取捨選択能力や優先順位を見極める力が自然と養われるでしょう。また、限られた文字数の中で、どうすれば相手に興味を持たせ、分かりやすく伝えられるかを工夫することで、表現力も向上します。
こうした実践を継続することで、「結局これはどういうことだろう?」と深く考える習慣が身につき、複雑な情報であっても瞬時に要点を把握し、簡潔にまとめる力が飛躍的に高まります。SNSは単なる情報発信ツールとしてだけでなく、言語化能力、特に要約力を鍛える強力なトレーニングツールとして積極的に活用できるのです。
単なる情報収集だけにとどまらないSNSの活用方法は、下記の講座でも解説しています。ぜひご覧ください。
テクニック5:自分自身に質問を投げかける
頭の中で考えがまとまらず、うまく言葉にできないと感じることはありませんか?それは、まだその考えが深く掘り下げられていない状態かもしれません。このような時に役立つのが、自分自身に積極的に問いかける「セルフクエスチョニング」です。これは、自分の考えや感情を客観的に見つめ、その本質をより深く理解するための効果的な方法と言えます。
例えば、あるテーマに対して「なんだか賛成できないな」と感じた際、「なぜ賛成できないのか?」「具体的にどの点に違和感があるのか?」「その違和感の根拠は何だろう?」と問いかけてみてください。さらに、「もし反対の立場だったら、どう主張するだろう?」「この考えのメリットとデメリットは何か?」といった、多角的な視点からの質問も有効です。このような自問自答を繰り返すことで、表面的な考えが深まり、より具体的で論理的な言葉として表現できるようになります。
このセルフクエスチョニングは、特に就職活動における自己分析で大きな力を発揮します。「自分の強みは何か」「なぜこの会社で働きたいのか」といった質問に対し、漠然とした答えではなく、具体的な経験に基づいたエピソードや明確な理由を伴う回答を導き出す助けになるでしょう。日頃から自分に質問を投げかける習慣を持つことで、自己理解が深まり、自分の考えを自信を持って言語化できるようになります。
4.実践事例で学ぶ成功のコミュニケーション
これまでのセクションでは、言語化能力を高めるためのテクニックをご紹介してきました。「本当にこれでうまくいくのかな?」と感じる方もいるかもしれません。そこでこのセクションでは、言語化力を実際のコミュニケーションにどう活かすかを、身近な場面をもとにご紹介します。
大学生活の中でよくあるシーンを取り上げますので、ぜひ「もし自分だったらどうする?」と考えながら読み進めてみてください。
Case-1 面接で自己PRを伝える場面
たとえば、面接で「あなたの強みは何ですか?」と聞かれた場面を想定してみましょう。ある学生は、PREP法(結論→理由→具体例→再結論)を意識して、次のように答えました。
私の強みは、異なる意見をまとめ上げ、課題を解決する力です。これは、大学のテニスサークルでの経験で培われました。サークル内では、練習方法について上達重視派と楽しさ重視派で意見が対立し、一時活動が停滞してしまったことがありました。私は両方の意見を丁寧に聞き取り、それぞれのメリット・デメリットを整理した上で、週ごとに練習メニューを変える折衷案を提案しました。
具体的には、基礎練習を重視する日は上達重視派の意見を取り入れ、ゲーム形式の練習では楽しさ重視派のアイデアを積極的に採用したのです。結果として、メンバー全員が納得して練習に取り組むようになり、その年の大学対抗戦では目標としていたブロック優勝を果たすことができました。
この経験を通じて、対立する意見の中から最適な解決策を見つけ出す能力と、それを周囲に納得してもらうための言語化能力が、私の大きな強みになったと実感しています。貴社においても、多様な意見を尊重し、チームで課題を解決していく上で、この強みを活かしていきたいと考えております。
この回答は、まず結論(私の強みは課題解決力です)を明確に述べ、次にその理由と具体的な経験(テニスサークルでの対立と解決策)を詳細に説明しています。そして最後に、その強みを企業でどのように活かすかという結論を再度提示することで、非常に説得力のある自己PRとなっています。
このように、感情的ではなく論理的に、具体的なエピソードを交えながら伝えることで、面接官は学生の行動力や思考プロセス、そして言語化能力の高さを評価しやすくなるのです。
Case-2 言語化を用いて自己分析を行う場面
ある学生は、自分が夢中になっている趣味や活動について友達に話すとき、「なんか面白いんだよね」「すごく楽しい」といった抽象的な言葉でしか伝えられず、相手にその魅力が十分に伝わらないことに悩んでいました。なぜ熱中しているのか、どんな感動があるのかを具体的に説明しようとすると、言葉に詰まってしまい、結局「自分の伝えたいことが何なのか」が自分でもわからなくなることが度々ありました。
そこで彼は、その趣味や活動の中で感情が大きく揺れ動いた瞬間を手がかりに、自分の行動や思考を結びつけて考える方法を試みました。例えば、創作活動で壁にぶつかった時の葛藤や、仲間との協力で大きな達成感を味わった瞬間など、印象的な出来事を一つ一つ深く掘り下げていきました。「なぜその時そう感じたのか」「どんな考えで行動したのか」「その結果、自分は何を得て、どう変わったのか」と問いかけることで、少しずつ自分の価値観や、その活動への情熱の源が言葉として明確になっていきました。
さらに、そうしたエピソードをSNSの140字投稿のように、短く要約する練習を繰り返しました。すると、伝えたいことの「核」がより鮮明になり、自分らしい言葉でその魅力を語れるようになっていきました。「ただ楽しいだけでなく、複雑な問題を解決するプロセスに没頭することに喜びを感じる」「仲間と協力して一つのものを作り上げる中で、予想外の発見や達成感を味わうことにやりがいを感じる」といった、彼の活動の深い意味や価値が言葉になったのです。
自己理解の一歩目として社会人基礎力診断MATCH plus Actionを受験してみるのをオススメします。今の自分を知るための自己分析と今後の自分が進んでいく方向を考えるための指針に関する情報を、さまざまな角度から得ることができます。
5.まとめ
言語化能力はトレーニングで向上する
これまでお伝えしてきた通り、言語化能力は決して特別な才能や先天的なものではなく、誰もが後天的に習得し、向上させることができるスキルです。多くの大学生が抱えがちな「自分の考えをうまく言葉にできない」「面接で意見が言えない」といった悩みは、適切なトレーニングによって克服できる課題だということを、この記事を通してご理解いただけたでしょうか。
本記事では、言語化能力の重要性を解説した上で、五感を使った描写練習、PREP法のようなフレームワーク思考、語彙力強化、SNSを活用した要約練習、そしてセルフクエスチョニングという、具体的で実践的な5つのテクニックをご紹介しました。さらに、非言語コミュニケーションの意識、オープンクエスチョンの活用、フィードバックによる自己改善といった、コミュニケーション全体の質を高めるためのポイントもお話ししました。
実践の重要性と継続のコツ
大切なのは、これらの知識を頭に入れるだけでなく、日々の生活の中で意識的に「実践」し続けることです。一度記事を読んだだけで満足してしまっては、せっかくの学びも宝の持ち腐れとなってしまいます。例えば、毎日食べたものの味や匂いを五感を使って細かく描写してみる、ニュース記事を読んだらX(旧Twitter)で140字以内に要約して投稿してみる、といった小さな習慣から始めてみてください。継続こそが、言語化能力向上の唯一の道だと心に留めておきましょう。
最初はうまくいかないこともあるかもしれません。しかし、焦る必要はありません。失敗しても構いませんので、まずは「やってみる」ことを大切にしてください。例えば、プレゼンテーションの練習後に友人からフィードバックをもらい、次の機会に改善点を意識する、といったPDCAサイクルを回すことで、着実にスキルは向上していきます。小さな成功体験を積み重ねることが、自信へと繋がり、やがてはあなたのコミュニケーション全体を豊かなものに変えていくはずです。
言語化能力を磨くことは、就職活動での自己アピールはもちろん、大学での学びを深め、将来のキャリア形成、そして豊かな人間関係を築く上で強力な武器となります。
ぜひ、今日から一歩踏み出し、あなた自身の言葉で世界と繋がる喜びを体験してください。

執筆:My CareerStudy編集部
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