自己理解とは?深めるメリットや方法、学生にとっての重要性について解説
- 公開日
- 2024/10/31
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自らのキャリアを形成するうえで欠かせない自己理解。
しかし、そもそも自己理解とは何かよくわからないという人や自己理解を深めたいけど方法がわからないという人は多いのではないでしょうか。
この記事では、自己理解を深めるメリットや方法、重要性を詳しく解説します。学生生活や社会人生活で充実した日々を過ごすためにも、ぜひ参考にしてください。
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目次
1.自己理解とは?
内閣府によると、自己理解は「いくつかの手段により自分の気質、性格、ある種のタイプ、価値観、考え方態度・行動などを深く知り、それを自分自身が納得して受け止めている状態のこと」と定義されています。
引用:内閣府「ユースアドバイザー養成プログラム」より引用
自己理解には、私的自己理解と公共的自己理解の2種類があります。
私的自己理解は自身の感情や行動に意識を向けて客観的に自分自身をとらえることを指します。
一方、公共的自己理解は容姿や見た目、行動において自身が周囲からどう見られているかを理解することを指します。
自分自身が思う自分と他者から見える自分を知ることで、自己理解はより深まります。
2.自己理解と似ている言葉と違い
自己理解について知るために、自己理解と似ている言葉と意味の違いも理解しておきましょう。
①自己意識
自己意識とは、外界ではなく自分自身に向けられた意識そのものを指します。
自己意識には、他者から自身の外面に向けられる「公的自己意識」と他者が観察できない自身の内面に向けられる「私的自己意識」があります。
自己意識はあくまでも自分自身への意識そのものを指す点で自己理解と異なります。
②自己肯定
自己肯定とは、ありのままの自分を肯定し、どのような自分も受け入れる姿勢のことです。
自己肯定の場合、自分の特性を肯定的にとらえて受け入れる点で自己理解と異なります。
③自己認知
自己認知とは、考え方や長所・短所など自分自身の在り方を正しく理解して受け入れることです。
自己理解では自分自身や他者を通じて自身を深く知ることですが、自己認知は自身の在り方を知り受け入れる点で違いがあります。
④自己発見
自己発見とは、日々の生活や経験で予期せずして、自分自身の新たな一面を見つけることです。自己発見は、意図せず自分の新しい一面を知るという点で自己理解と異なります。
⑤自己評価
自身ができたことやできなかったなどを振り返り、自分自身を評価することです。 自己評価では設定した目標や目的など特定の指標を用いるケースが多いですが、自己理解には明確な指標がないという点で異なります。
3.自己理解を深めるメリット
続いて、自己理解を深めることで得られるメリットをご紹介します。
➀感情や行動をコントロールしやすくなる
自己理解が深まると、一時の感情によって衝動的に行動することがなくなり、自分自身をコントロールしやすくなります。
ストレスや不安、悩みなどの負の感情が生まれたときにどう対処すべきかを冷静に考え行動できるのは、自己理解が深い人の特徴です。
例えば、何かトラブルが発生した際にあたふたと慌ててしまい頭が真っ白になるのではなく、その要因を見極めて解決に向けた適切なアクションを冷静に考えられます。
このように、ストレスを感じたときに適切にストレスと向き合い、対処法を冷静に考えられるスキルのことを「ストレスコントロール力」といいます。
ストレスコントロール力については、以下の講座・記事でもご紹介しています。
②自分に合った意思決定ができる
自己理解が深まると、自分自身が大切にしている価値観が明確になり、他者の考えや意見によい意味で左右されず、自身の責任で意思決定できるようになります。
例えば、キャリアについて相談した際、「安定した大手企業に勤めるべき」という意見があったとします。
このとき、自己理解が浅いと相手のアドバイスに流されてしまい、将来的に自分に合わないキャリアを選択するかもしれません。
一方で、自己理解が深い人であれば周囲の意見に耳を傾けつつも、最終的には自身の考えを大切にし「自分は安定性よりも、組織を成長させていく初期フェーズに興味がある」と明確な意思を持ってベンチャー・スタートアップ企業への就職を考えるなど、自己理解に沿った意思決定ができます。
③他者目線で物事を見ることができる
前述したように、自己理解を深めるためには、自分自身を見つめ直すだけでなく、自分が他者からどう見られているかも意識する必要があります。
自己理解が深い人ほど、他者の視点で物事を考えるクセが自然と身に付いています。
それにより、自分の言動や行動が相手にどう思われるかを相手の立場で想像し、どのように接すれば適切にコミュニケーションが図れるかを考えられるようになります。
結果的に、周囲と良好な関係性を築きやすく、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
例えば、友達が食事に誘ってくれたのにどうしても都合がつかない場合、単に断るのではなく、「ぜひ行きたいですが、どうしても外せない用事があって今日は行けないです。来週の火曜日はどうですか?」などと伝えれば、相手は理由と別日の提案をもらっているので、悪い気はしないでしょう。
④物事に対して意欲的に取り組める
自己理解が深まり、自身の強みや弱みを正しく把握していれば、自分に向いている方法や考え方で仕事や勉強に取り組めるようになります。
例えば「自分は最初に計画を立ててから物事に取り組むとスムーズに進められる」と理解していれば、着手する前に全体の見通しを立てるなど、自分に合った取り組み方が可能になります。
また、自己理解が深いと、たとえ行動した結果うまくいかなかったとしても、漠然と「自分は何もできない」とネガティブになることなく、失敗を受け止めて次にどう活かすかを建設的に考えられるようになります。
そして結果的に、物事に対して意欲的に取り組む姿勢が自然と身につき、自己成長にもつながります。
4.自己理解が浅いとどうなる?
では、自己理解が浅い場合、どのような影響が考えられるのでしょうか。考えられる影響を解説します。
①自分らしさを理解するのに時間がかかる
自己理解が浅い人は、自分自身の価値観や得意・不得意を把握しづらく、自分らしさを見つけるのに時間がかかります。また、何かを意思決定する際の軸が整理できていないため、一時の感情で物事を判断してしまい後悔する恐れもあります。
さらに、自分理解が浅いことで自分自身を過大評価して大きなミスをしてしまったり、過小評価して新しいことに挑戦できなかったりするリスクもあります。誤った自己評価をしてしまうことで、成長機会を喪失しているかもしれません。
②人間関係でトラブルになりやすい
自己理解が浅い人は、他者の立場で物事を考える癖が付いておらず、人間関係でトラブルを起こしてしまう恐れがあります。相手を不用意な一言で傷つけてしまったり、何かに取り組む際に相手からの協力が得づらかったり、良好な人間関係を築くのに苦労してしまう可能性があります。
③ストレスや不安を抱えやすい
自身の強みや弱みを正しく把握できていないと、漠然としたストレスや不安を抱えやすくなります。
自己理解が浅いことで、失敗をしたり物事がうまくいかなかったりした場合に、正しく要因分析ができず、自分に向かない解決策を導き出してしまうためです。
場合によっては、一度の失敗で「自分はだめな人間だ」などと必要以上に落ち込んでしまったり、挑戦する前に過去の失敗経験がストッパーとなってしまい一歩を踏み出すのに時間がかかったりするかもしれません。
自己理解が深ければ、その失敗が自分の弱みによって生じたものなのか、別の要因があるのかを分析しやすくなります。
そして、同じミスを防ぐにはどう対策すればよいか、自分に合ったやり方を見つけられる可能性が高まります。
④自己成長の機会を逃してしまう
自己理解が浅い場合、他者から自分がどう見られているか客観視できず、相手からアドバイスや指摘があった際に素直に受け止められない場合があります。
自分自身を否定されている気分になり、受けたアドバイスや指摘を拒否してしまうことで、自己成長の機会を逃してしまうかもしれません。
5.自己理解を深める方法
では、自己理解を深めるためにはどのような方法があるのか、詳しく見ていきましょう。
①リフレクション(内省)をおこなう
リフレクション(内省)とは、自分自身の行動や考えを振り返って見つめ直すことを指します。自分自身のことを俯瞰して見つめ直すというプロセスは、自己理解を深めるきっかけになります。
リフレクションをおこなう際の代表的なフレームワークをご紹介します。
KPT法
KPT法は、Keep、Problem、Tryのそれぞれの頭文字を取った、課題解決や改善をおこなうためのフレームワークです。
Keepでは、すでによい結果が得られている取り組みを今後も継続していくべきアクションとして整理します。
Problemでは、解決すべき課題やボトルネックになっている部分を明らかにします。
Tryは実行すべき施策を意味し、課題解決や改善に向けたプランを立てて実行します。
KPT法を使うことで、物事に取り組む過程で気付いた強みや課題を振り返り、自己理解を深めることができます。また、自己理解を深めるだけでなく、自分の強みを活かしながらその課題を克服するための具体的なアクションプランまで導き出せる点も、KPT法の特徴です。
KDA法
KDA法は、Keep、Discard、Addのそれぞれの頭文字を取ったフレームワークです。
Keepでは、KPT法と同じく、よい結果が得られている取り組みは今後も継続できるよう整理します。
Discardでは、今後やらないことをクリアにします。例えば失敗の直接的な要因となっている事象や、大きな問題ではないが効率的ではないことなどが対象となります。
Addでは、分析結果をもとに新たに始めることや、挑戦することを整理します。
KDA法も課題解決や改善を目標としている点ではKPT法と同じです。
ただしKDA法ではうまくいかなかったことに対して、その要因になった行動を洗い出して「何をやめるか」を明確にするという点が異なります。そして、不要な行動や思考を排除したうえで、新たな取り組みを検討できるため、自身の行動パターンや思考パターンを見直したい場合にもKDA法は効果的です。
YWT法
YWTとは、やったこと(Y)・わかったこと(W)・次にやること(T)を意味する用語です。
自分がおこなったことを明確にし、そこから何がわかったのか、どのような気付きを得たのかを振り返り、これから何をすべきかを設定します。
ジョハリの窓
ジョハリの窓は、自分を深く知るためのフレームワークの一つです。具体的には、「自分から見た自分」と「相手から見た自分」を以下の4つの窓に整理して自己理解を深めていきます。
窓の種類 | 概要説明 |
---|---|
開放の窓 | 自分も他者も認識していること。名前や性格など |
盲点の窓 | 自分はわかっておらず、他者は知っていること。自分が気付いていない考え方や行動の癖など |
秘密の窓 | 自分はわかっているが他者は知らないこと。隠しておきたいコンプレックスなど |
未知の窓 | 自分も他者も知らないこと。性格や才能など |
ジョハリの窓を用いると、自分に対する認識と相手双方の認識を整理することができます。他者との関係を知りコミュニケーションを見つめ直せるため、結果的に自己理解が深まります。
取り組む際は特に「開放の窓」の要素を増やすことを意識しましょう。
開放の窓の要素が多いということは、それだけ「自分から見た自分」と「相手から見た自分」に差異がないということを意味します。つまり、主観的、かつ客観的に自己理解ができている状態になります。
開放の窓の要素を増やすには、相手の考えを引き出すコミュニケーションを意識して「盲点の窓」の要素を減らすことが大切です。
また、積極的に自己開示をすることで「秘密の窓」の要素を減らしていきましょう。
このようにそれぞれの窓の要素を整理していくことで、自己理解が深まるだけでなく、相手も自分も知らない自分の一面が見つかるかもしれません。
モチベーショングラフ
モチベーショングラフは、自分の人生を振り返り、起こった出来事を整理して、そのときに自分はどのような気持ちになったかを言語化していくフレームワークです。
自身が大切にしている価値観や、好きなこと・苦手なことなど、これまで気付かなかった自分自身の発見につながります。
モチベーショングラフは、可能な限り細かく書き込むと精度が高まります。幼少期から現在に至るまで、中長期で自身のモチベーションを振り返ってみましょう。
適性検査ツールを活用してみる
自己理解がなかなか進まない人は、適性検査ツールを使ってみるのもおすすめです。
My CareerStudyの「社会人基礎力診断MATCH plus Action」では、受験結果からパーソナリティの傾向、強みや弱み、社会人として十分なスキルと不足している力、向いている業界・職種などを明らかにできます。
ぜひ活用し、自己理解を深めるための参考にしてみてください。
感情の動きや気付きに注目する
自己理解を深めるために、自分の感情の動きや気付きに注目するのも有効な方法です。
例えば、映画を観たあとや友達と遊んだあとの帰り道、プレゼンや試験をやり切ったあとなど、ふとした瞬間の感情の動きに注目してみると、意外と認識していなかった自分の感情が見つかるかもしれません。
ふとした瞬間に出る感情は、あなたの価値観や大切にしたいことを言語化できるチャンスです。その感情に気付くことが、自己理解を深めるきっかけになります。日常生活での感情の動きや気付きに意識して注目してみましょう。
身近な人に自分のことを聞いてみる
自身が理解している自分と他者から見た自分にはギャップがあるかもしれません。そのギャップを知るために、家族や仲のよい友達に自分のイメージを聞いてみることは、自己理解の有効な手段です。このように他者目線で自分自身を知ろうとすることを他己分析と呼びます。
他己分析をおこなうメリットは、自分の強みや弱みを知る過程で客観的な視点を取り入れられることです。自身と他者の理解が合っている部分には説得力を持たせられますし、理解が合っていない場合には、そのギャップを埋めるためにとるべき行動が明確になります。
他己分析をおこなう際には、ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。
6.学生のキャリア形成に自己理解が重要な理由
自己理解により自分の強みや価値観、興味・関心を把握できれば、それをもとにやってみたいことや成し遂げたいことを見つけやすくなります。
そのため、自己理解が深ければ、学生の皆さんがキャリア形成を考える際、より自分に合ったキャリアを選択できるようになります。就職活動時のエントリーシートや志望理由、自己PRにも説得力を持たせやすくなるでしょう。
また、自己理解が深ければ自然と話す内容にも一貫性が生まれるため、企業はあなたがどのような人物かを判断しやすくなります。結果、自身が希望するキャリア形成の一歩をよい形で踏み出せるようになるでしょう。
7.学生生活を振り返って自己理解を深めてみよう!
自己理解を深めるために、まずはあなた自身の学生生活を振り返ってみましょう。振り返る際には、My CareerStudyの経験メモを活用するのがおすすめです。
ここでは、経験メモの使い方を流れに沿って解説します。
STEP1:自分の経験を簡潔に記載する
まず、経験メモに残したい経験を記載、もしくは選択肢から自分の経験に近いもの選びましょう。
書き出す際は必ずしも大会での優勝や表彰、誰も成し遂げたことのない成果などの目覚ましい経験である必要はありません。あまり深く考えすぎず、ぱっと思いつく経験を気軽に書き込むようにしましょう。
STEP2:経験で活かされた自分の強みや弱みを記載する
次に、STEP1の経験を経て感じた自分の強みや弱みを記載します。
モデルケースを複数用意しているので、言語化が難しいと感じる場合には選択肢の中から選んでみてもよいでしょう。
また、前述した「社会人基礎力診断MATCH plus Action」を受験している人は、その結果をもとに「パーソナリティから選ぶ」から選択することもできます。
STEP3:具体的なエピソードを記載する
次に、STEP2で選択した自分の強みや弱みを活かしたエピソードを具体的に記載します。
STEP4:経験から学んだことを記載する
最後に、経験を通じて何を学んだのか、あなた自身の気付きを言語化していきます。
その際、経験を通じて前向きな気持ちになれたのか、苦手意識を感じたのか、感情面の動きも付け加えられるとなおよいでしょう。
経験メモの実践例
経験メモを活用した実践例をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
STEP1:自分の経験を簡潔に記載する |
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アルバイト |
STEP2:経験で活かされた自分の強みや弱みを記載する |
合理的に動き、状況判断に長けている |
STEP3:具体的なエピソードを記載する |
居酒屋でアルバイトをしており、大学3年生のときに店長からアルバイトリーダーに任命された。 その際に「もう少し利益率を高めたい」という店長の悩みを聞いた。 何か貢献できることはないかと考えるなかで、アルバイト人数の調整ができないか考えた。 理由は、お店が混雑しているのに人手が足りない、お店が空いているのにアルバイトメンバーが多いといったことがあり、課題に感じていたからだ。 そこでまずは、過去6ヵ月分の来店人数と売上記録を時期や曜日ごとに分析した。 そして、混雑しやすい時期や曜日、時間帯などに応じた人員配置の見直しを店長に提案したところ、納得し喜んでもらえた。 アルバイトメンバーには、現在の店の状況を伝え、少し入れるシフトが少なくなるかもしれない旨を一人ひとりに説明し、納得してもらった。 誰かに偏ったシフトにならないよう、調整は慎重におこなった。 この施策を打ち出してから、利益率を10%向上でき、一部はアルバイトの時給アップにもつなげられ、店長にもアルバイトメンバーにも喜んでもらえる結果となった。 |
STEP4:経験から学んだことを記載する |
最初は少しハードルが高いと感じていたが、自分なりに考えて行動したことでよい結果につながったのでうれしかった。
また、自分は現状を分析して改善策を考えることが好きだと知った。 |
8.まとめ
自己理解が深まると、大学生活をさらに充実させることができると同時に、社会へ出てからは自己成長に向けて意欲的に仕事に取り組めるようになります。また、自分自身を深く知り、価値観や強み・弱みを正しく把握しておくと、将来的なキャリアを選択する際も自分に合った意思決定ができるようになるでしょう。
My CareerStudyでは、自己理解を深めるために役立つコンテンツを多数ご用意しています。あなたのキャリアをより充実したものにできるよう、ぜひ積極的に活用してください。
執筆:My CareerStudy編集部
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