傾聴力とは?高め方やコミュニケーションでの活かし方、社会人基礎力での位置づけについて解説

傾聴力とは?高め方やコミュニケーションでの活かし方、社会人基礎力での位置づけについて解説

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公開日
2024/6/10

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傾聴力とは?高め方やコミュニケーションでの活かし方、社会人基礎力での位置づけについて解説

「傾聴力」という言葉について、知っていても具体的にどのような力なのかわからない人は多いのではないでしょうか。
傾聴力は単に相手の話を聴くだけではありません。この記事では、傾聴力の意味や身に付けるメリット、高める方法や実践例を解説します。

1.傾聴力とは?

傾聴力とは?

「傾聴力」とは、アメリカの臨床心理学者カール・ロジャースが提唱したもので、相手を深く理解するための能力を指します。ただ相手の話を聞くだけではなく、共感したり、深掘りする質問を投げかけたりして、相手の話をさらに引き出す力として定義されます。
参照:斧原藍(立命館グローバル・イノベーション研究機構 補助研究員)「カール・ロジャースに学ぶ『聞く姿勢』」2020年2月執筆

1-1 聴く・聞く・訊くの違い

「きく」という言葉には、大きく3種類の意味が存在します。それぞれの意味は下表のとおりです。

種類 意味
聴く ●能動的な意味合いが強い
●相手が伝えようとしている内容を理解しようと耳を傾ける際に用いられる
聞く ●受動的な意味合いが強い
●自然と耳に入ってきた言葉や音を認識する際に用いられる
訊く ●自身が知りたい内容を相手に尋ねる際の表記
●上記2つの意味とは大きく異なる

なかでも傾聴力は「聴く」要素を多く含んでいます。つまりただ相手の話を聞くのではなく、相手の話を理解するために積極的に相手と関わる行為である、というニュアンスが込められています。

1-2 社会人基礎力における「傾聴力」とは?

社会人基礎力とは、アクション(前に踏み出す力)・シンキング力(考え抜く力)・チームワーク(チームで働く力)の3つの能力によって構成され、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として経済産業省が2006年に定めたスキルを指します。

傾聴力はこのなかの「チームワーク(チームで働く力)」に分類され、「相手の意見を丁寧に聴く力」と定義されています。

参照:経済産業省「社会人基礎力」

傾聴力は社会人として仕事をするにあたっても必要不可欠なスキルであり、自身のキャリアを形成していくうえで重要な要素とされています。

2.傾聴の種類と具体例

傾聴の種類と具体例

「傾聴」にはいくつかの種類があります。ここでは、傾聴力という言葉をさらに細分化して見ていきましょう。

2-1 受動的傾聴

受動的傾聴とは、相手が話しているペースに合わせて頷いたり、相づちを打ったり、話の途中で割り込んだりせずに向き合う姿勢を指します。

人は、自分のペースで話せないと大きなストレスを感じます。受動的傾聴は話し手である相手のペースを乱さず話しやすい雰囲気をつくることで、より多くの内容を話してもらえるように配慮することを意味します。

2-2 反映的傾聴

反映的傾聴とは、相手の話に対し「つまり◯◯ということですね」など、要点を言葉にし、話をしっかりと聴いている姿勢を示すことです。

会話のなかでただ頷いたり、相づちを打ったりするだけでは、相手からすると「本当に話を聴いてもらえているのか」と不安になるかもしれません。
一方で、相手が話すたびに要点を整理しようとすると相手のペースを乱しかねません。そのため、受動的傾聴と反映的傾聴はその場の雰囲気に応じて適切な頻度でおこなう必要があります。

要点をつかみづらい場合は、相手が発した言葉をそのまま繰り返すだけでも効果的です。「私はあなたの話を聴いている」という姿勢を示すことが重要です。

2-3 積極的傾聴

積極的傾聴とは、相手の思考を引き出す質問をしながら話の内容を深掘りする姿勢を指します。

質問を通して相手によい気付きを与えられれば、それだけ会話の内容が深まります。そのためにはあなたの質問力が求められるでしょう。質問力は以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

また、My careerStudyでは質問力を高めるための講座も用意しています。実践的に取り組みたいという人はぜひ受講してみてください。

3.傾聴力を身に付けることで得られるメリット

傾聴力を身に付けることで得られるメリット

傾聴力を身に付けると、さまざまなメリットが得られます。ここでは4つのメリットをご紹介します。

3-1 相手と信頼関係を築きやすくなる

傾聴力は相手との信頼関係の構築に役立ちます。
「安心して話せる」「話をしっかり聴いてくれる」といった印象を相手に与え、心の内を話せる関係になれれば、お互いの距離感が縮まり信頼関係が生まれやすくなります。

例えば、ビジネスの場で顧客の悩みや課題を引き出すことができれば、ニーズに沿った提案やサービスの提供が可能になるでしょう。

3-2 視野が広がり、多角的な考え方ができるようになる

さまざまな質問をして相手を理解し、より多く考えを引き出せれば、あなた自身の視野や考え方も広がります。

人にはそれぞれの考え方や価値観があります。なかには、これまであなた自身が思い付くことがなかった考えを持っている人もいるかもしれません。傾聴力があれば相手の考えにより深くアプローチでき、あなた自身の考え方や発想もより多角的になるはずです。

3-3 自分自身を客観的に見られるようになる

相手を深く知ると、あなた自身と相手の違いに気付くことで自己理解が深まり、自分自身を客観的にみられるようになります。先入観を取り払い、相手の立場で物事を考える癖がついて、あなた自身の人間力を高めるきっかけになるかもしれません。

3-4 物事に対して主体的に取り組む癖がつく

傾聴を意識すると、「相手から話を引き出すにはどうすればよいか」を考えるようになるので、主体的に行動する癖がつきやすくなります。

主体的とは、あなた自身が積極的に働きかけ行動する姿勢を意味します。誰かに言われてから行動をする人よりも多くの出来事を経験でき、物事に対して責任感を持てるようになります。

4.傾聴力を高めるうえで必要な3つの要素

傾聴力を高めるうえで必要な3つの要素

臨床心理学者カール・ロジャースは、傾聴力を高めるうえでは3つの要素が必要だと提唱しています。ここでは、その3つの要素を詳しく解説します。

要素1:共感的理解

共感的理解とは、相手の考え方や状況を理解しようとする姿勢のことです。
例えば、相手があなたと異なるものの見方や考え方でも否定せず、あなた自身も同様の意見を持っているように相づちを打って話を聴きましょう。
共感的理解は、相手からより多くの話を引き出すうえで非常に効果的です。

要素2:無条件の肯定的関心

無条件の肯定的関心とは、あなた自身の考えや価値観を介在させず、相手の話に耳を傾ける姿勢を指します。

例えば、相手がネガティブな話題ばかりを話す人でも「後ろ向きな人だ」と評価せず、「なぜネガティブな話が多いのか」と背景を想像し、相手を理解しようと試みるようにします。相手に対し否定的な考えを持たず、理解を深めようとする姿勢は、関係性を深めるうえで非常に有効です。

要素3:自己一致

自己一致とは、相手の話の内容や意図を汲み取り、あなた自身の理解を明確にする姿勢です。

例えば、会話のなかで理解できない部分があったとしましょう。その疑問や不明点を放置してしまうと、相手の意図を汲み取れず話が噛み合わなくなり、結果的に相手に「話しても伝わらない」と感じさせてしまう可能性があります。

そのため、相手の話のなかで理解が追いつかない箇所は適宜質問して真意を正しく把握し、あなた自身の理解を深めるようにしましょう。

5.傾聴力を高める方法と実践例

傾聴力を高める方法と実践例

では、傾聴力を高めるにはどのようにすればよいのでしょうか。その方法と実践例をご紹介します。

5-1 自分が話す割合を意識する

相手と話す際に、あなた自身が話す割合を意識してみましょう。なるべく相手が話す量を多くし、割合としては相手:あなたが7:3もしくは8:2になるよう心がけます。

実践してみると「話し足りない」と感じる人が多いと思いますが、問題ありません。傾聴を心がけるとき、あなたが言葉を発するのは相手の話の内容に対する相づち、共感、真意を把握するための質問がメインになります。そうすると必然的に話す量は少なくなるでしょう。まずは「話し足りない」と感じる程度に抑えることを意識してみましょう。

5-2 相手が話しているときに遮らない

相手が話しているとき、考えに同意できなかったり、どうしても反論したくなったりする場合があるかもしれません。しかし、相手の話を遮らず最後まで話を聴くよう心がけましょう。
話を遮られたり反論されたりすると、相手は話しづらいと感じてしまいます、また、あなた自身にとっても聞きたい内容を相手から引き出せず、双方にとってよい結果につながりにくくなってしまいます。

「無条件の肯定的関心」で解説したとおり、あなた自身の好き嫌いや価値観などの先入観をなくして、「なぜそう考えるのか」と相手の考えの背景に考えを巡らせ、理解を深める姿勢を示すことが大切です。

5-3 話を聞く態度や姿勢を意識する

相手にとって話しやすい雰囲気をつくる意味では、聴く態度や姿勢も重要です。

例えば、相手が真剣な話をしようとしているときに、テーブルに肘をついていたり、足を組んで座っていたりすると、関心がなさそうな印象や威圧感を与えてしまい話をしづらい空気を作ってしまいます。相手と目線を合わせて、話しやすい雰囲気をつくるよう心がけましょう。

5-4 相手の立場や状況を理解しようとする

質問をしたり共感をしたりして、相手の立場や状況を理解する姿勢を示しましょう。

相手が話してくれた内容を肯定的に受け止め、そのうえで「もっとあなたのことを知りたい」と話に耳を傾けると、共感的理解につながります。あなたと異なる意見や価値観であった場合は、より深く理解するために質問すれば自己一致にもつながります。

5-5 ミラーリングやペーシングを意識する

ミラーリングとは相手に親近感を持たせる方法の一つで、行動や仕草を真似る行為を指します。例えば、相手が話の最中にお茶を飲み始めたら、あなたも話に耳を傾けながらお茶を飲んでみましょう。仕草だけではなく、相手が発する言葉遣いや口癖を真似てみるのも効果的です。

ペーシングとは話のテンポや声のトーンを相手に合わせるもので、相手が早口であればなるべくあなたも早口で話し、相手に話しやすいと感じさせる手法です。

いずれも行動に移しやすい方法であり、相手が心地よく話すための雰囲気をつくるうえで取り入れられるテクニックです。

5-6 バックトラッキングを活用する

バックトラッキングとは、以下3点の行動を指します。

  • 相手が話した内容の事実を繰り返す
  • 相手が話した感情や気持ちを繰り返す
  • 相手の話を要約し繰り返す

バックトラッキングを適切に実践すると、相手はあなたに対し「話を聴いてくれている」と感じやすく、より深い内容を話しやすい状態になります。以下の実践例も参考に、ぜひ会話に取り入れてみましょう。

方法 相手 あなた
事実の繰り返し 昨日、ハワイ旅行から帰ってきたんだ ハワイへ行ってたんだ、羨ましいな
感情の繰り返し 試合に負けてしまってすごく悔しくてさ 君が毎日頑張ってたのは知っているよ。だから悔しいよね
要約 彼女が来月からイギリスへ留学することになってて、帰ってくるのが1年後なんだよね。僕も1年後に半年間留学へ行くことになっててさ じゃあ1年半くらいは彼女と会えなくなるわけだ

ただし重要なのは、ご紹介したテクニックを完璧にこなすことではありません。相手との会話を楽しみ、実り多いものにすることです。テクニックにこだわりすぎてかえって会話がぎこちなくなることがないよう、肩の力を抜いて試してみましょう。

6.学生のうちから傾聴力を高めるには?

学生のうちから傾聴力を高めるには?

学生のうちから傾聴力を高めるには、ここでご紹介した内容を大学生活のなかで積極的に実践するのが一番の近道です。以下を実践の機会として活用しましょう。

  • 家族や友人との会話
  • ミートアップなど初対面の相手と会話する場

社会人になると、初対面の人から話を聴く機会も多々あります。傾聴力があれば、関係性がないなかでも話を引き出しやすくなるため、1年目からスムーズに仕事を進められる可能性が高まります。

将来のことを見据えて、親しい間柄の相手だけではなく、初対面の相手に対して実践する機会もつくるようにしましょう。

また、My careerStudydでは傾聴力を身に付けることができる実践的な講座を提供しています。興味がある人はぜひ受講してみてください。

7.まとめ

傾聴力は、日常生活、ビジネスのいずれのシーンでも有効活用できる汎用的なスキルです。身に付けられれば、相手との関係性を深く強固なものにでき、あなたが本当に知りたい情報を入手する際にも役立つでしょう。

自分本位にならず相手にとって話しやすい雰囲気をつくる、話したくなる質問を投げかけるなど練習は必要ですが、日常の会話のなかで意識をすれば傾聴力は必ず身に付けられます。専門的に学びたい意欲のある人は、My CareerStudyが提供する講座や記事を参考にしてみてください。

社会へ出ても活用できる実践的な傾聴力を身に付けて、あなたのキャリアの可能性を広げましょう。

執筆:My CareerStudy編集部

執筆:My CareerStudy編集部

My CareerStudyは学生に向けた社会で役立つ知識やスキルを提供するキャリア学習サービスです。
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