メタ認知とは?効果や鍛え方、高い人と低い人の特徴を解説
- 公開日
- 2024/6/28
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「メタ認知」という言葉をご存知でしょうか。メタ認知は身に付ければ、プライベート・ビジネス問わず大きなメリットが得られる能力です。
この記事では、メタ認知の概要や得られるメリット、身に付けるための実践方法を詳しく解説します。あなたが持つ可能性を最大限広げられるよう、ぜひメタ認知の理解を深めましょう。
目次
1.メタ認知とは?
メタ認知はアメリカの心理学者ジョン・H・フラベル氏によって定義された心理学用語で、ビジネス分野では人材育成に活用されるケースが多くなっています。
メタ認知は自身の認知を客観的にとらえることを意味し、考える・感じる・記憶する・判断するなどの認知活動をコントロールする能力を指します。メタ認知を高めると、仕事へのモチベーションや生産性を高く保つことができ、良好な人間関係を築くことにもつながるため、ビジネス・プライベートの両方で重視されています。
2.メタ認知の種類
メタ認知は、メタ認知的知識とメタ認知的技能の2つの種類に分けられます。それぞれ詳しくみていきましょう。
2-1 メタ認知的知識
メタ認知的知識は、あなたが自分自身について知っている知識を意味します。
例えば「私は失敗してもすぐに切り替えて行動できる」「私は大勢がいる場では消極的になりあまり発言ができない」など、自分で把握している強みや弱みがメタ認知的知識に該当します。
つまりメタ認知的知識を持っている人とは、客観的な立場で自分をみつめ、自分がどのような人かを理解し言語化できる人を指します。
2-2 メタ認知的技能
一方、メタ認知的技能は、メタ認知的知識を把握したうえで自分自身をよい方向へ導くアクションを考え、実行する能力を指します。
メタ認知的技能はさらに、メタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールの2種類に分類されます。
メタ認知的モニタリング
メタ認知的モニタリングとは、メタ認知的知識をもとに今の自分と重ね合わせ、把握している内容は本当に正しいか、悪い方向へ向かっていないかを監視することです。
具体的には、以下のような例が挙げられます。
- やるべきことが達成できていないと気付くこと
- 少しでもわかったという感覚をもつこと
- できるかもしれないと予想をたてること
- これでよいのか点検すること
- 目標を達成できたか評価すること
参考: 二宮理佳(2014)「多読と内発的動機づけ、及びメタ認知活動」『一橋大学国際教育センター紀要』5 号,pp.17-32
わかりやすく具体例を挙げて考えてみましょう。
例えば、試験勉強のために各教科の練習問題を解いているとします。 結果として、英語の科目の進捗が他の科目よりも悪く、正答率も低いことがわかりました。このとき、「わからない英単語が多いことが原因となっている可能性が高い」といったように分析を経て「自分は英語が苦手だ」と認識することがメタ認知モニタリングです。
メタ認知的コントロール
メタ認知的コントロールとは、メタ認知的モニタリングで確認した内容をもとに目標達成のためのアクションを考え実行することです。
具体的には、目標達成に向けた計画およびプロセス構築、手段の選択、自己修正などをおこないます。
先ほどの例を取り上げて説明します。
試験勉強をおこなうにあたって英語に苦手意識があると、メタ認知的モニタリングによってわかったとしましょう。
このとき、「わからない英単語が多いことが苦手意識の原因となっている可能性が高いので、先に英単語を頭に入れよう」「その後、練習問題を解いていこう」といったように、目標達成のために勉強方法を検討して実行することがメタ認知的コントロールです。
参考: 二宮理佳(2014)「多読と内発的動機づけ、及びメタ認知活動」『一橋大学国際教育センター紀要』5 号,pp.17-32
3.メタ認知能力が高い人の特徴
メタ認知能力が高い人にはどのような特徴があるのでしょうか?具体的にみていきましょう。
3-1 状況を客観視するのが得意
メタ認知能力が高い人の特徴としてまず挙げられるのは、状況を客観視するのが得意な点です。
例えば、大学の授業に遅れてしまいそうなときや、アルバイト先でお客さんからの注文を間違えてしまったときなどに、「失敗してしまった事実」をいったん受け入れたうえで「今何をすべきか」を冷静に考え、行動に移せます。
その際、失敗に慌てふためいて動けなくなるのではなく即座に対応策を考え、実行し、失敗から学びを得て次に活かせるのが大きな特徴といえるでしょう。
課題発見力について知りたい人は、以下の講座もぜひご覧ください。
3-2 自分の長所短所を理解できる
自分の長所と短所を理解できる人もメタ認知能力が高いといえるでしょう。
メタ認知能力が高い人は自分自身の特性を客観的にとらえられるので、自分が何を得意とし、何を不得意とするかを正確に理解できます。
短所を認識するには自分が不得意なことやできないことに向き合う必要があり、場合によってはストレスに感じるかもしれません。
しかし、短所も含めて自分自身を把握することで初めて、メタ認知能力を身に付けられるようになります。
長所と短所を理解していると、長所が活かせる分野に積極的に挑戦することで成功体験を積み重ねたり、短所だと認識している部分を補うために事前準備を徹底したりと、必要に応じた行動が取れるようになります。
3-3 他人と関係を構築するのがうまい
他人と関係を構築するのがうまいのもメタ認知能力が高い人に見られる特徴です。
メタ認知能力が高いと、相手の考えや行動を多面的に考察できます。自分自身の価値観や感情だけで判断するのではなく、考えや行動の裏側にある相手の気持ちを想像しながら真意を汲み取り、相手の意見を否定せず認めることができるので、人から信頼されやすくなります。
3-4 モチベーション高く物事に取り組める
モチベーション高く物事に取り組める点も特徴として挙げられます。
目的を達成するためには何が必要か、自身のどんな能力やスキルが活かせるのかなど、メタ認知的知識をベースに必要なアクションを具体的に考えられます。これにより目標達成までの道筋が明確になり、結果としてモチベーション高く物事に取り組めます。
仮にアクションがうまくいかなくても、状況を客観視して次の行動を考えてモチベーションを落とさず前向きに物事に取り組み続けられるのは、メタ認知能力が高い人の特徴です。
4.メタ認知能力が低い人の特徴
逆に、メタ認知能力が低い人にはどのような特徴があるかをまとめました。
- 相手と協調するのが難しい
- 失敗から立ち直るのに時間がかかる
- 失敗することを恐れて行動を起こしづらくなってしまう
メタ認知能力が低いと、相手がどう考えているかよりも自分の感情や価値観を優先してしまい、相手を尊重できず関係性をよいものにできない場合があります。
また、物事に取り組んで失敗したときに「失敗したのは自分の能力が低いから」などと必要以上に落ち込んでしまい、状況を俯瞰してみられず、感情をコントロールできなくなってしまう傾向にあります。
こうした過去の失敗経験を引きずってしまうことで、行動する前に「どうせうまくいかない」と後ろ向きな思考を強く持ってしまい、積極的に行動する意欲が湧かないという悪循環に陥ってしまうこともあります。
相手と協調できなかったり必要以上に失敗を重く受け止めてしまったりすることが、結果として行動を起こしづらくさせ、自分自身の可能性を狭める結果となってしまうのです。
5.学生のうちからメタ認知を意識するメリット
ここまでの内容を踏まえて、学生のうちからメタ認知を意識することで得られるメリットをご紹介します。
5-1 学習意欲が向上し、効率的に勉強できる
メタ認知を活用すると、効率的に勉強に打ち込めるようになります。
前述のとおり、メタ認知能力が高い人は状況を客観視して何が必要か具体的に検討できるため、高いモチベーションで物事に取り組める傾向にあります。これは学習過程にも活用できるスキルです。
何がわかっていないのかを冷静に分析し、課題や障壁となっている部分を把握することができれば、取るべきアクションをクリアにできます。
例えば、英語の試験の点数が良くなかった場合を例に考えてみましょう。ここで漠然と苦手意識を持つのではなく、なぜ点数が良くなかったのかを分析します。
もしも単語力が不足していることがボトルネックだとわかれば、間違えた単語をノートにまとめて復習するといった具体的なアクションプランを立てることができます。これによって点数が上がれば自信が付き、学習意欲の向上につながるでしょう。
また、スケジュールを俯瞰的に立てられるようになることもメリットといえます。自分の得意不得意を客観的に把握できていれば、どの教科にどれだけ時間をかければよいか概算しやすくなります。ここからスケジュールを逆算して計画的に物事に取り組めば、効率よく時間を使えるでしょう。
5-2 自分に合ったキャリアを構築できる
学生のうちからメタ認知能力を意識することは、将来のキャリア構築にもよい効果をもたらします。
得意や不得意、興味の有無など自身の特性を把握できれば、自分に何が向いているのかを冷静に判断できます。そのため、自分の性質に合った「天職」に出会える可能性も高くなります。
例えば、「私は相手の話を引き出し、適切な提案やアドバイスをするのが得意だ」「誰かの役に立つことに喜びや楽しみを感じる」という特性を理解していれば、その特性に合った職種や仕事を見つけやすくなるでしょう。
天職の見つけ方については、以下の記事でも詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
5-3 環境や時代の変化に柔軟に対応できる
昨今はVUCA(ブーカ)時代といわれ、テクノロジーの急速な発達などにより将来予測が難しくなっています。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)のそれぞれの単語の頭文字を取った造語です。
先入観や固定観念にとらわれすぎると環境の変化に対応できず、キャリアの選択肢が狭まってしまう可能性があります。
もしもメタ認知能力を意識する癖が付いていれば、環境の変化も自分自身も客観的にとらえられるため、環境の変化に対応するためには今どのようなスキルを磨いておくべきか、現状から学ぶべきものは何かを理解したうえで行動に移せるでしょう。
6.実践してみよう!!メタ認知を鍛える方法
6-1 セルフモニタリングとセルフコントロール
まず挙げられる方法が、セルフモニタリングとセルフコントロールです。
セルフモニタリングとは自身の行動が適切なものかを観察することを指し、セルフコントロールとは、不要な考えや行動を慎みよい方向へ軌道修正することを意味します。
例えば、学校のゼミや授業などでチームをつくり、与えられたテーマで議論するとしましょう。チームメンバーの発言にどうしても賛成できない場合、すぐ反対意見を述べたくなるかもしれません。しかし「ここで一方的に反対意見を発すると、チームとして議論しづらい環境になるのではないか」と思考するのはセルフモニタリングに該当します。
そして「発言内容にただ反対するのではなく、賛成できる部分を示しながら自身の考えを述べてみよう」と考えて行動するのがセルフコントロールです。
例のように、自分自身の思考や感情を観察して「本当にそれでよいのか」を自分自身に問い、発生した感情や思考をコントロールして適切な行動をとることは、メタ認知能力を高めることにもつながります。日常生活のなかでセルフモニタリングとセルフコントロールを取り入れることで、結果的にメタ認知能力のトレーニングにもなるでしょう。
セルフモニタリングの質を高めるためには、自分自身の心の動きや特性に目を向ける必要があります。自己分析などを通じて自分と向き合い、自分の思考回路を正しく把握しましょう。
My CareerStudyの「社会人基礎力診断MATCH plus Action」を活用すると、定量的なデータをもとにあなた自身を客観視できます。
また、より実践的に自己分析について学べる講座として「今すぐできる自己分析の基礎」をご用意しています。
6-2 マインドフルネス瞑想
マインドフルネス瞑想もメタ認知能力のトレーニングに効果的です。
マインドフルネスとは、「今」だけを意識している心の状態を指します。5分後、10分後、来年など先のことを考えず、今の自分にのみ集中を向け、ストレスを軽減し、集中力を高める行動がマインドフルネス瞑想です。ストレスをコントロールする意識が身につき、今この瞬間に最大限のパフォーマンスを発揮できるようになります。
マインドフルネス瞑想で今の思考や感情に意識を向けることで、正しく自分自身を認識する力が向上します。
自分の認知プロセスや思考・感情変化を深く理解しようとする癖がつき、メタ認知能力のトレーニングになるでしょう。
ストレスとの向き合い方については以下の講座でも詳しくご紹介しています。
6-3 ライティングセラピーやフリーライティング
ライティングセラピーとフリーライティングもメタ認知能力をトレーニングする方法の一つです。
ライティングセラピーとは、あなたの感情や思考を言葉に書き起こし、あなたの心のなかにあるネガティブな要素を軽減する手法です。
フリーライティングは、10分程度の決められた時間のなかでひたすら手を動かし文章を書き続ける、またはキーボードを使って文字を打ち続ける動作を指します。直感的に思いつく内容を書き連ね、あなたの潜在的な意識を徐々に顕在化させる効果があります。
考えや思考を文章で可視化すると、これまでストレスに感じていた物事が「大したことではないかも」と受け止められるようになり、どうして自分がストレスを感じていたのかを明確にできます。客観的に自身を見つめ直し、ストレスと向き合いやすくなる点で、メタ認知能力を高めるトレーニングになるでしょう。
フリーライティングを実践する際には、My careerStudyの「経験メモ」を活用してみましょう。
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7.まとめ
メタ認知能力を高めると、人間力が向上する・他者と関係性を構築しやすくなるなど、大きなメリットがあります。あなたの今後の可能性を大きく広げる有効な能力となるでしょう。
My CareerStudyは、学生のうちから将来を見据えて行動するあなたを全力で応援します。ご紹介した講座やこの記事の内容を参考に効率的にメタ認知能力を高め、ビジネスパーソンとして活躍するための土台を学生のうちから強固なものにしていきましょう。
執筆:My CareerStudy編集部
My CareerStudyは学生に向けた社会で役立つ知識やスキルを提供するキャリア学習サービスです。
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